堂々たるマイペース

珍しく集中して仕事をしていると
ピンポーンと玄関チャイムが鳴る。
番犬代わりか知らないが、オイラが最もドアに近いので
出てみると、オイラの生保の保険レディー(・・いやおばさん)が
突入してきて、「新しいプランを作ったので5〜10分
いいですか?」と当然のように言ってくる。


ヒジョーに珍しい集中をくだらない営業で妨げられたことと
仕事中にアポもなく突入してきて「5分くらいいいだろう」という
その感覚と、それを言ったおばはんの化粧が異常に下手で
歯が黒くて汚かったことがダイレクトにムカツボに入ってしまい
冷たく目を光らせて「今忙しいっす、ちゅーか、仕事中なんで
資料だけ置いておいてもらったら観ときますから」
となんとか応対した。


このオイラがぁオイラがぁこんな精一杯大人の対応をしてやったというのに、
そのおはぐろババアときたら、まだごちゃごちゃ言っている。
思わず「仕事中だっていってんじゃん」とプチ切れすると
なんとか帰っていった。


その後15分くらいにメールがきて「資料は見たか、どうだった」
のようなことが書いてあるので(ちゅーか、おばはん
オイラをはってんのか?どこからメールしてんだ)、
「観るわけねーだろ、どういう神経だ、社会人なら
せめてアポをとれ、常識がなさ過ぎる」とメールしたら
「確かにさっきは性急すぎマぁシぃタぁ」というヘソを曲げたような
メールが来る。まるで痴話げんかじゃないか。なんなんだ。
ちゅーか、お前はどこにいるんだ。


そんなこともあって、すっかり当該生保に不信感、という仕返ししたい感に
包まれているときに、チリちゃんから、旦那の元同僚が
生保の営業をしているけど会ってくれるか?ちゅうことだったので
こりゃ渡りに船ということにした。


同じ歳のさわやか青年が現れ、基本的な話を聞いた。
その話によれば、そのおはぐろババアが持ってきた商品が
とんでもないものだったことがわかり、ますますババア抹殺への
勢いを強くしたのだが、こんな勢いでまた新たな刺客に
引っかかっているだけのような気がしなくもないが。


そして、昨日わざわざさわやか青年が具体的プランを持って府中へ
来てくれることとなった。しかし、こんな日に限ってセクハラ社長が、
よし会議だ!とか言って、報告書の大すじを話し合うとか意気込んでいる。
まずい、待ち合わせの時間が迫り来る。大すじを、と言ったくせに、
社長は「ウムこの書式はまずいね、ま、どうでもいいんだけど」と言いながら
ずっと書式の話をしている」


「ムキョーーーー!」とか発狂しそうだったので
(保険屋との待ち合わせに遅れそうなくらいで発狂する
脆弱なオイラの神経)、打ち合わせを中座して保険屋と会う。


「なんとか30分くらいにしてもらえませんか」というと
したり顔で「それは無理ですね」と言う。「ムキョーーーー!」
ここでも打ち合わせが気になり発狂しそうだ。


しかも新たな刺客は質問して答えさせるというスタイルがあるらしく
焦っている、と散々言っているのに「さ、じゃぁkeytaさんは
どう思いますかぁ?」とかやたら聞いてくる。


(お前と学園ごっこしている場合じゃねぇんだよ)


と危うくキレそうだったが、やたらに刺客が落ち着いているので
終いには打ち合わせはどうでも良くなってきて
ホヨーっとしてしまった。堂々たるマイペースだ
(こいつ何型なんだろう、とかちょっと思った)。


しかし、刺客の保険はおはぐろババアの保険と比べると
あまりに話がうますぎる。どうなってるんだ。金の話っつうのは
質量保存の法則みたいなのがなくて不気味だ。
世界のすべての人がその保険に入ったらどうなるんやろ。


とか、考えている時点で刺客に吸い込まれてるがな。
いかんいかん。


やっと刺客が開放してくれたので(刺客がいうには
こんなに早く“開放"するのは初めてらしい)、
心持、焦りを思い出して会社へ戻ると社長と若子が
「僕の名前はね〜叔父さんの名前からとったんだよ〜」とか
むちゃくちゃ雑談しとる。


・・・オイラの焦り意味ねーーーぇ!