いつかいた場所いなかった人

その店は学校へ続く細い道の途中にあった。
調理場を晒すように何故かドアがあけはなれた調理場が一階。
そして、小さな食べるスペースが二階。


大学の時に足しげく通った中華屋だ。
中華屋なのにカレーがうまく、カレーか定食の厚揚げと野菜の
煮込み?みたいのを食べていた。大体700円くらい。
研究室のやつらと行くときはそれにピッチャーのビールだ。


勢いがつくと細道を学校と逆へくだって正面の庄屋へ吸い込まれることが
50回くらいはあったっけ。カレーだけは今でもふと思い出すことがあった。


で、卒業ぶりに友達と行ってみた。
はじめて「一品メニュー」をお願いし(看板の定食メニューではない)、
生ビール(ピッチャーじゃない!)を注文する。
ちっさい子供が「いらっちゃいませ」と言って
皿やらを出してくれる。後ろには更にちっさな弟がいる。


セレブ。相当セレブなかんじだ。


蒸し鶏の葱ソースなんぞを頼んじゃったりして。
アボガドとトマトのサラダなんてのもあったんだ(中華屋?)。


そして紹興酒。「ちょっとだけお砂糖ください」なんてのも
卒業から過ぎ去った期間の長さを物語る。


でもやはり最後には(カレー喰いたい)となり
ワガママを言って、二口分だけ出してもらう。
カレーの妙な黒さと入っている肉の妙な固さに(ああこれこれ)と思う。


しかしふと思い出してみれば、さっきの子供は在学中には
影も形もなかったんだな、ということに月日の長さを
友人としみじみ。「久しぶりですか?」と店のお姉さんに聞かれて
「卒業ぶりです」と曖昧な答えをしてみたり。


お姉さんは店の娘さんだとか、ちなみにそばにいた妹さんは
「私はその間にいって戻ってきました」だって。
やはり、卒業からの長さを見抜かれたのか・・・。